ヒップホップ創成期を刻んだ名作映画『Wild Style』。当時のNYシーンを象徴する面々が集結し、当時の勢いを伝える名サウンドトラックをレプリカ仕様で再現した特別再発カセットが登場。

『Wild Style』は、Charlie Ahearn監督とFred Braithwaite aka Fab 5 Freddyの手によって生み出された、ヒップホップ映画の原点に位置する作品である。フィクションとドキュメンタリーの境界を取り払いながら、1980年代初頭のNew Yorkに芽生えたヒップホップ・シーンの姿を鮮烈に捉えたフィルムであり、そのサウンドトラックは後の文化を形作る礎となった重要作であると言えよう。Double Trouble、Busy Bee、The Cold Crush Brothers、The Fantastic Freaksらが参加し、サウス・ブロンクスの空気感や初期ブロックパーティーの熱気を克明に封じ込めている。

本作は、Arrow Filmsによる原版4K修復を記念して、Mr Bongoが展開する特別再発シリーズの一環として登場するものである。1983年に発売されたオリジナル・カセットを、当時のアートワークを忠実に再現したレプリカ仕様でよみがえらせた再発盤である。

Chris Stein(Blondie)が設立したAnimal Recordsからリリースされた本サウンドトラックは、ストリートからレコーディング・スタジオへと拡張していくヒップホップの変化を映し出した内容である。SteinとBraithwaiteによる共同制作のもと、Double Trouble(Rodney Cee & KK Rockwell)、Busy Bee、The Cold Crush Brothers、The Fantastic Freaksなど、当時を代表する面々が集結している。自由奔放で移動的な映像の気配をそのまま宿した音像は、サウス・ブロンクスの路地裏へと聴き手を運ぶような臨場感を持ち、荒削りでありながら圧倒的な没入感を備えている。

ヒップホップ第一世代を支えた声の背後には、その後のジャンル全体を形作る基盤となった数々のリズムが存在する。古いブレイクビーツの引用に聴こえるほどの質感を持ちながら、本作の楽曲はすべて独自に制作されたものである。BraithwaiteとSteinが全体を統括し、Steinがギターとエフェクトも担当。Aretha Franklinのバンドを経てパンク・シーンに現れたドラマー Lenny “Ferrari” Ferraro と、ベーシスト David Harper が多くの象徴的なグルーヴを生み出した点も特筆される。

時を経て、『Wild Style』のサウンドトラックは、Charlie ChaseやGrand Wizard Theodoreによるスクラッチ、反復するモチーフ、忘れ難いリリックなどとともに、ヒップホップ文化の基盤として揺るぎない地位を確立した。無数の作品にサンプリングされ、引用され続け、シーンの本質とフィルムの精神を最も純度高く体現した“設計図”であり続けている。



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